第10話 男、ときどき女の子

現代を生きる女性に、か弱さや可愛らしさ、従順さを求めるのは時代錯誤なのかもしれない。けれど男の身としては、無いものねだりと知りつつも、どうしてもそんな理想を追い求めてしまう。

自分の理想の女性に巡り会うことが極めて困難だと言うのなら、いっそ自らがその理想になってみよう......。私の女装のモチベーションとなっていたのは、これなのかと今更ながら思う。ちなみにこれは典型的な代償行為だ。

たまに、これまでの自撮り写真を見返していると、自分の思い描く女性像がふわりと立ち現れる一枚に出くわすことがある。
そんな時、写っているのは紛れもなく自分なのに、ちょっと愛おしいような、狂おしい変な気持ちになってしまうことがある。

思うに...代償行為といい、本人が自覚していないだけで、精神はとっくに破綻しているのだろう。

男の身体で女装をするときに、体型という壁は厚い。外見だけで理想を実現するのは無理があるからこそ、せめて心だけでもと、自撮りの瞬間は気合いを入れて強く女性を意識した。
そうして写真の中に理想の女性の雰囲気を宿せたとき、気分はいっそう高揚し、ますます女装にのめり込んでいったのだと思う。


そんなふうに過ごしてきた私の女装生活だったが、近ごろ少しずつ先行きが怪しくなってきている。興味は十分残っているのに、自分の身体が理想からどんどん遠ざかっていってしまうのだ。

もどかしさと寂しさを感じつつ、女の子に変身する回数が確実に減ってきている。

今日は一日中男の子が続くでしょう。なんて日も近いかも。

7.13.2026